海外赴任が決まったら?海外在住者が知っておくべき公的年金制度について徹底解説!
はじめての海外赴任が決まったとなると、さまざまな不安が頭をよぎりますよね。年金に関しても、不安の種となるでしょう。
「海外に移住したら、年金には継続して加入できるのか」
「海外在住だけど、日本の年金保険料は支払う必要があるのか」と疑問が浮かぶかもしれませんね。
この記事では海外への赴任・移住・転居を予定している方のために、年金保険料の支払いを継続できるのか、継続しない選択肢もあるのか、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
将来のためにも、きちんと理解しておきましょう。
目次
- 1 日本の公的年金制度
- 2 国民年金とは?
- 3 厚生年金とは?
- 4 【国民年金】海外在住者の保険料支払いは2択
- 5 1. 保険料の支払いをやめる
- 6 メリット
- 7 デメリット
- 8 2. 任意加入する
- 9 必要な手続き
- 10 メリット
- 11 デメリット
- 12 【厚生年金】海外在住者の保険料支払いは「社会保障協定」がカギ
- 13 社会保障協定が発効済の国
- 14 赴任期間が5年以内と見込まれる場合
- 15 赴任期間が5年を超える場合
- 16 社会保障協定を結んでいない国
- 17 保険料支払い状況の確認方法は?
- 18 1. ねんきんネット
- 19 2. ねんきん定期便
- 20 まとめ:第1号被保険者(自営業者・学生・無職など)は任意加入を検討、第2号被保険者(会社員・公務員など)は社会保障協定を確認しよう
日本の公的年金制度
公的年金制度とは社会保障制度のひとつです。国民年金や厚生年金など、国が運営する年金制度を指します。
日本の公的年金制度は上の図のように2階建ての仕組みです。
1階部分は20歳以上のすべての人が加入する国民年金、2階部分は会社員・公務員が加入する厚生年金です。
被保険者は3種類に分かれるので、ざっくりと次のように理解しておきましょう。
被保険者の種別 | 職業 | 加入する公的年金制度 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 自営業者・学生・無職など | 国民年金のみ |
第2号被保険者 | 会社員・公務員など | 国民年金と厚生年金 |
第3号被保険者 | 専業主婦(主夫)など | 国民年金のみ |
国民年金とは?
国民年金には日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入します。一定の保険料を納めた場合、受給できる年金は次の3種類です。
受給できる年金 | 受給できるケース |
---|---|
老齢基礎年金 | 65歳になったとき (繰上げ受給・繰下げ受給が可能) |
障害基礎年金 | 病気やケガで障害が残ったとき |
遺族基礎年金 | 家族の働き手が亡くなったとき |
なお第3号被保険者は保険料の負担なく基礎年金を受け取れます。
配偶者(第2号被保険者)が加入している厚生年金などが負担するためです。
厚生年金とは?
厚生年金に加入している企業や工場などに勤める70歳未満の方は、厚生年金の被保険者となります。厚生年金の適用事業所で働いていれば、高校を卒業してすぐ就職した方のように20歳未満でも加入の対象です。
保険料は毎月の給料の一定割合であり、人それぞれ異なります。第2号被保険者は厚生年金・国民年金ともに毎月の給料から保険料が天引きされるため、毎月の支払い額は給与明細で確認しましょう。なお厚生年金は勤務先が保険料の半分を負担しており、実際の支払い額は給与明細に載っている金額の倍になります。
また給料の額によって保険料の負担額が異なりますから、収入が多ければ支給される年金の額も多くなります。
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【国民年金】海外在住者の保険料支払いは2択
結論からいうと、第2号被保険者・第3号被保険者は加入している年金制度がそのまま継続するため、国民年金について気にする必要はありません。
ここでは第1号被保険者が取れる2つの選択肢を紹介します。
1. 保険料の支払いをやめる
第1号被保険者が海外に転出する(日本に住民票がなくなる)場合、国民年金の加入資格を失います。なにも手続きをしなければ、保険料を支払う必要はありません。
ただし転出日の翌日を含む月の前月までは保険料を納める必要があるため、注意しましょう。たとえば5月30日が転出日なら4月まで、5月31日が転出日なら5月までは保険料を支払います。
メリット
保険料の支払いをやめるメリットとしては、日本円で支払う手間がなくなることでしょう。
海外で働くとなれば、収入も現地通貨になるケースがほとんどです。
保険料を支払う際には日本円へ両替する手間や送金手数料がかかりますし、日本円を使うことがわずらわしいと感じるかもしれません。
デメリット
デメリットは大きく次の2点です。
- 老齢基礎年金の受給額が減る
- 障害年金・遺族年金を受け取れない
老齢基礎年金は20歳から60歳になるまでの40年間、保険料を納めた月数によって受け取れる額が異なります。支払いをやめれば当然、将来受け取れる年金の額が少なくなります。
また海外に住んでいる間に病気やケガで障害が残った場合や死亡した場合でも、遺族年金や障害年金の請求はできません。
2. 任意加入する
住民票を海外に移しても、日本に国籍があれば国民年金に任意加入できます。
必要な手続き
これから海外に転居する方や、日本国内に納付等の協力者がいる方は、お住まいの市区町村窓口にて手続きをします。以下3点を持っていきましょう。
- 基礎年金番号またはマイナンバーがわかるもの
- 窓口に足を運ぶ方の顔写真付き本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
- 委任状(申請者以外が手続きする際に必要)
すでに海外にお住まいの方や、日本に協力者がいない方の窓口は、国内最後の住所地を管轄する役所・年金事務所です。くわしい手続きは該当する年金事務所へ確認しましょう。
メリット
任意加入のメリットは2つあります。
- 保険料の支払いをやめる場合にくらべて、将来受け取れる年金額が増える
- 障害年金や遺族年金を受給できる
国民年金に任意加入して保険料を支払いつづければ、将来受け取れる年金の額を減らさずにすみます。また任意加入した場合には、障害年金や遺族年金も請求できます。
デメリット
海外に住みはじめてしばらく経ってから任意保険に加入した場合、将来受け取れる年金の額が減ってしまう点はデメリットといえるでしょう。任意加入では保険料をさかのぼっての納付ができないためです。将来日本に帰国する予定であれば、はじめから任意保険へ加入しておくと良いでしょう。
【厚生年金】海外在住者の保険料支払いは「社会保障協定」がカギ
厚生年金の適用事業所に勤める限りは、日本の住所があるなしにかかわらず厚生年金に継続して加入します。他方、相手国の社会保障制度にも加入する必要があり、保険料の二重負担が生じます。
保険料の二重負担を防止するために2国間で結ばれるのが社会保障協定です。協定発効済みの国への赴任なら、日本または相手国の社会保障制度への加入が免除されます。なお2023年3月時点で、22ヵ国との協定が発効済みです。
社会保障協定が発効済の国
社会保障協定が発効済みの国へ赴任する場合、勤務期間が5年を超えるかどうかで加入する年金制度が変わります。
赴任先の国 | 赴任期間 | 年金制度への加入 |
---|---|---|
社会保障協定が発効済の国 | 5年以内 | 日本の社会保障制度 |
5年超 | 原則、赴任先の国の社会保障制度 | |
社会保障協定を結んでいない国 | - | 日本と赴任先の国両方の社会保障制度 |
赴任期間が5年以内と見込まれる場合
赴任期間が5年以内の場合、加入するのは日本の社会保障制度のみです。相手国の社会保障制度への加入は免除されます。
赴任期間が5年を超える場合
赴任期間が5年を超える場合、加入するのは原則として相手国の社会保障制度です。また両国の合意が得られた場合には、逆に日本の社会保障制度に加入します。
社会保障協定を結んでいない国
タイやベトナムなど社会保障協定を結んでいない国で働く場合は、日本と相手国の両方の社会保障制度に加入しなければいけません。ただし赴任する国での社会保険料を負担してくれる会社もあるため、事前に確認すると良いでしょう。
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保険料支払い状況の確認方法は?
国民年金や厚生年金への加入状況、保険料の支払状況を確認するには2つの手段があります。
- ねんきんネット
- ねんきん定期便
1. ねんきんネット
2. ねんきん定期便
ねんきん定期便も自身の年金記録で、毎年誕生月に送られてくるハガキまたは封書です。50歳未満と50歳以上では記載内容が異なりますが、どちらでも保険料の納付額や年金加入期間を確認できます。
まとめ:第1号被保険者(自営業者・学生・無職など)は任意加入を検討、第2号被保険者(会社員・公務員など)は社会保障協定を確認しよう
この記事では海外へ赴任する予定の方・海外在住の方に向けて日本の年金について説明しました。
とくに第1号被保険者が海外へ転出すると国民年金の加入資格を失うため、任意加入するかどうかが肝要です。第2号被保険者は基本的には会社の総務担当に確認することになるかと思いますが、ご自身がその担当者である場合、社員を赴任させる場合には、赴任先の国との社会保障協定を確認しましょう。
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