【国際相続手続きの完全ガイド】海外在住の家族が死亡… HSBC等の海外資産で慌てないための全手順
海外で暮らすご家族に万が一のことがあった時、その大切な資産をどのように日本へ承継すればよいか、考えたことはありますか?グローバル化が進んだ現代、ご家族が海外に居住し、現地の銀行や証券会社に資産を持つことは珍しくありません。しかし、いざ相続となると、日本国内の手続きとは全く異なる「壁」がいくつも立ちはだかります。
本記事を読めば、国際相続で直面する複雑な手続きの全体像と、特に海外資産の承継でつまずかないための『鍵となる書類』、そして専門家と連携するメリットが明確になります。これまで数多くの富裕層の海外資産サポートを行ってきたOSSJの専門家が、実例に基づき、どこよりも実践的に解説します。
この記事では、まず国際相続がなぜ難しいのかを解説し、その後、「現地での初動」「最重要書類の取得」「日本での手続き」「海外資産の承継」「税務」という5つのフェーズに分けて、やるべきことを具体的に説明していきます。
国際相続が国内の相続と比べて格段に複雑になるのには、明確な理由があります。主に「準拠法」「プロベート」「言語・文化」という3つの大きな壁が存在します。どの国の法律に基づいて遺産を分けるのか(準拠法)、裁判所が関与する厳格な相続手続き(プロベート)が必要か、そしてすべての書類を外国語で準備し、現地の専門家とやり取りする必要があるなど、個人で対応するには困難な課題が山積しています。これらの課題を事前に理解しておくことが、スムーズな手続きへの第一歩となります。
壁①:準拠法の問題:どの国の法律が適用されるのか?
故人がどの国の国籍で、どこに住み、資産がどこにあるかによって、適用される法律が変わります。例えば、日本では故人の国籍国の法律(本国法)が適用されますが、アメリカやイギリスなどでは、故人が住んでいた場所の法律(常居所地法)や不動産がある場所の法律(所在地法)が適用されることが多く、ルールが全く異なります。この「準拠法」の特定を誤ると、相続手続きそのものが無効になるリスクさえあります。
壁②:プロベート(Probate):裁判所が関与する厳格な手続き
英米法の国(アメリカ、イギリス、香港、シンガポール、マレーシア、オーストラリアなど)では、相続手続きに「プロベート」と呼ばれる裁判所の検認手続きが必須となることがほとんどです。これは、遺言が有効であることの確認や、相続財産管理人を選任し、その管理人が資産の回収、債務の弁済、そして相続人への分配を行うまでを裁判所が監督する制度です。資産額が大きいほどプロベートが長期化する傾向にあり、数ヶ月から数年かかることも珍しくありません。
壁③:言語と物理的な距離の壁
国際相続では、現地の役所、裁判所、金融機関とのやり取りがすべて外国語になります。提出する戸籍謄本などの日本語の公文書は、すべて公式な翻訳を添付する必要があります。また、手続きのために何度も現地へ渡航する必要が出てくる可能性もあり、時間的・金銭的な負担は計り知れません。プライベートバンクの口座などは、セキュリティが厳格なため、特に手続きが複雑になる傾向があります。
【フェーズ1】海外在住の家族が死亡… 連絡直後、現地で何をすべきか
ご家族の訃報を受けたら、深い悲しみの中でも、迅速に動かなければならないことがあります。まずは遺族の代表者が現地へ渡航する準備を始めますが、現地へ渡航する準備に入る前に、必ず現地の日本大使館・領事館へ連絡しましょう。日本語で現地での手続きの流れや必要書類について教えてもらえるだけでなく、その後の手続きで困った際の重要な相談窓口となります。また、故人が加入していた保険なども確認し、渡航費や遺体搬送費用がカバーされるかどうかも調べておくと良いでしょう。
【現地での初動フロー】
訃報を受ける → 在外公館へ連絡 → 渡航準備(保険確認) → 現地へ渡航
まずは在外公館(日本大使館・領事館)へ連絡する
現地に渡航する前に、まず故人が亡くなった国の日本大使館または領事館に電話やメールで連絡しましょう。現地の法律に基づいた死亡に関する手続きの流れ、必要書類、信頼できる現地の葬儀社や通訳などを日本語で案内してくれます。在外公館は、海外で困った日本人を助けるために存在します。無料で相談できる有力な相談窓口なので、些細なことでも遠慮なく問い合わせることが重要です。
渡航前に確認すべきこと:保険・クレジットカードの付帯サービス
故人が海外旅行保険やクレジットカードに加入していた場合、その付帯サービスを必ず確認してください。保険によっては、遺族の渡航費用、遺体の日本への搬送費用、現地での通訳サービスなどが補償される場合があります。カード会社や保険会社に連絡し、補償内容と請求に必要な書類(領収書など)を事前に正確に確認しておきましょう。すべての領収書は、後で請求できるよう、一つのファイルにまとめて保管することをおすすめします。
\海外口座の解約や、お金のお困りごとなら/
【フェーズ2】国際相続手続きの最重要書類:「死亡証明書」と「アポスティーユ」を徹底解説
国際相続の成否は、ある2つの書類を確実に取得できるかにかかっていると言っても過言ではありません。それが、現地の役所が発行する「死亡証明書(Death Certificate)」と、その公文書が本物であることを証明する「アポスティーユ(Apostille)」です。これらの書類は、日本での死亡届提出から、HSBC香港のような海外銀行口座の解約、不動産の相続(プロベート)まで、あらゆる場面で提出を求められます。このフェーズでの行動が、後の手続きを大きく左右します。
なぜ「死亡証明書(Death Certificate)」が全ての鍵となるのか?
死亡証明書は、単に死亡の事実を証明するだけではありません。①日本の役所に死亡届を提出し戸籍に反映させる、②海外の金融資産(銀行、保険、証券)の名義変更や解約を行う、③不動産の相続手続き(プロベート)を開始するなど、国内外の相続手続きを進めるための「マスターキー」となる書類です。これがなければ、手続きは一切進みません。
取得時の最重要ポイント:必ず「複数部」取得する
死亡証明書は、原則として「原本(Original Copy)」の提出を求められます。故人が複数の国に資産を持っていたり、複数の金融機関と取引があったりする場合、その数だけ原本が必要になります。日本に帰国してから追加で取り寄せるのは非常に困難なため、現地にいる間に、必ず複数部(目安として最低でも5〜10部)取得しておきましょう。もし原本の複数発行が難しい場合は、役所や公証人に認証してもらった「認証謄本(Certified Copy)」を発行してもらいます。
【専門家からのアドバイス】
「多くのご遺族が、死亡証明書を1部しか取得せずに帰国し、後で大変な後悔をされています。金融機関との手続き中に原本を預けてしまい、他の手続きが完全に止まってしまうケースが頻発しています。滞在中に『これでもか』というくらい多めに取得しておくことが、後の時間と費用を節約する最大のコツです。」
もう一つの重要書類「アポスティーユ(Apostille)」とは?
アポスティーユとは、外国の公文書(この場合は死亡証明書)が、発行国の政府によって正式に発行された「本物」であることを、日本の役所や金融機関に対して証明するための証明のために付される認証のようなものです。ハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)加盟国間で有効で、これを死亡証明書に付けてもらうことで、その後の手続きが格段にスムーズになります。アポスティーユは通常、現地の外務省などで取得できます。
アポスティーユを取得しなかった場合のリスク
もしアポスティーユを取得しないと、死亡証明書を日本の役所や海外の金融機関に提出する際に、「この書類は本当に本物か?」という証明から始めなければならなくなります。具体的には、現地の日本大使館・領事館で「領事認証」を受けるなど、さらに煩雑で時間のかかる手続きが必要となり、相続手続きが大幅に遅延する原因となります。
【よくある失敗例】
「アポスティーユの存在を知らずに帰国してしまい、HSBC香港の口座解約手続きが完全にストップしてしまったケースがありました。日本からアポスティーユを取得するには、現地の代理人を立てる必要があり、結果的に数十万円の追加費用と数ヶ月の時間がかかってしまいました。死亡証明書を取得したら、その足でアポスティーユを取得しに行く、とセットで覚えておきましょう。」
【フェーズ3】日本での手続き:日本の役所への届出と戸籍への反映
海外で重要な書類を取得し、日本に帰国した後の最初のステップは、日本の公的な記録に故人の死亡を反映させることです。この手続きを完了させなければ、日本国内での相続手続き(預貯金の解約、不動産の名義変更など)に進むことができません。海外での手続きとは異なり、日本国内での手続きは比較的スムーズに進みますが、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
死亡届の提出:いつ、どこに、何を?
故人が海外で亡くなった場合、死亡の事実を知った日から3ヶ月以内に、死亡届を提出する義務があります。提出先は、届出人の所在地または本籍地の市区町村役場、あるいは死亡地の日本大使館・領事館です。提出の際には、以下の書類が一般的に必要となります。
- 死亡届(死亡届書)
- 海外の役所が発行した死亡証明書(原本)
- 上記死亡証明書の日本語訳文(翻訳者の署名・捺印が必要
- 故人のパスポート
- 届出人の本人確認書類(パスポート、運転免許証など)
この手続きを経て、故人の戸籍謄本や住民票に「死亡」の事実が記載されます。
なぜ日本語訳が必要なのか?
日本の役所は、外国語で書かれた公文書をそのまま受理することはできません。そのため、死亡証明書に記載されている内容(氏名、生年月日、死亡日時、死亡場所など)を正確に日本語に翻訳した文書を添付する必要があります。この翻訳は、翻訳会社に依頼することもできますし、ご自身で翻訳することも可能ですが、その場合は翻訳文に「翻訳者(あなた自身の氏名)」を明記し、署名・捺印する必要があります。
\海外口座の解約や、お金のお困りごとなら/
【フェーズ4】海外資産の承継:プロベート手続きと海外金融機関とのやり取り
日本での手続きが完了したら、いよいよ国際相続の核心部分である海外資産の承継手続きに移ります。特に、故人がHSBC香港のような金融機関に口座を持っていたり、海外に不動産を所有していたりする場合、このフェーズが最も専門的かつ時間を要するプロセスとなります。個人で対応するのは極めて困難であり、現地の専門家との連携が不可欠です。
プロベート(Probate)手続きの開始
前述の通り、英米法系の国では、相続財産を承継するために「プロベート」という裁判所の検認手続きが必要です。この手続きを開始するには、まず現地の弁護士(Solicitor / Lawyer)を選任し、裁判所に遺産管理の申し立てを行う必要があります。裁判所は、遺言の有効性を確認したり、相続財産管理人(Executor / Administrator)を選任したりします。この相続財産管理人のみが、故人の資産を法的に管理・処分する権限を持つことになります。
海外金融機関(HSBC等)との具体的なやり取り
裁判所から正式に選任された相続財産管理人は、死亡証明書、アポスティーユ、裁判所の決定書などを持って、HSBC香港などの金融機関と交渉を開始します。
- 口座の凍結と残高証明書の取得:死亡の事実を通知し、口座を凍結したうえで、その時点での正確な残高証明書を発行してもらいます。
- 必要書類の提出:金融機関が要求する膨大な書類(相続人全員の身分証明書、戸籍謄本とその翻訳・認証書類など)を提出します。
- 口座解約と資産の送金:すべての書類が受理された後、口座が解約され、中の資産が指定された相続人の口座に送金されます。
このプロセスは、金融機関のコンプライアンスが非常に厳格であるため、少しでも書類に不備があると、何度もやり直しとなり、数ヶ月から1年以上かかることもあります。
【税務】国際相続における相続税の注意点
資産の承継手続きと並行して、非常に重要になるのが税金の問題です。国際相続では、日本と海外の両方で税金が課される可能性があり、これを正しく理解・処理しないと、後で追徴課税などの思わぬペナルティを受けることになりかねません。特に資産額の大きい富裕層にとっては、納税額に数百万円、数千万円単位の違いが生まれることもあります。
二重課税のリスクと「外国税額控除」
故人の資産が海外にある場合、その国で相続税(または遺産税)が課され、さらに日本の相続税も課されるという「二重課税」の状態が発生することがあります。この負担を調整するため、日本の税法には「外国税額控除」という制度が設けられています。これは、海外で支払った相続税額を、日本の相続税額から一定の範囲で控除できる制度です。しかし、この控除を受けるためには、海外で納税したことを証明する書類など、複雑な手続きと計算が必要となります。
誰が日本の相続税を払う義務があるのか?
日本の相続税は、故人(被相続人)と相続人の「住所」がどこにあったかによって、課税対象となる財産の範囲が大きく異なります。例えば、故人も相続人も10年以上海外に住んでいる場合は、日本国内にある財産のみが課税対象となりますが、どちらか一方が日本に住んでいる場合は、海外にある財産も含めた全世界の財産が課税対象となります。この判定は非常に複雑なため、国際税務に精通した税理士への相談が不可欠です。
【解決策】なぜ専門家のサポートが必要なのか?
これまで見てきたように、国際相続は法律、税務、言語の壁が複雑に絡み合う、極めて専門的な手続きです。各フェーズで一つでも手続きを誤ると、時間的にも金銭的にも大きな損失を被る可能性があります。ご家族を亡くされた深い悲しみの中で、これらの複雑な手続きをご遺族だけで進めるのは、精神的にも物理的にも非常に大きな負担となります。
OSSJのような国際相続の専門家は、以下のような形で皆様をサポートします。
- ワンストップ対応:各国の弁護士、会計士、税理士との強力なネットワークを活かし、お客様が必要な各専門家を探す手間を省き、手続き全体を統括します。
- 時間とコストの削減:豊富な経験に基づき、最短ルートで手続きを進めます。無駄な渡航や書類の再提出を防ぎ、結果的にトータルの費用を抑えることができます。
- 精神的負担の軽減:煩雑な書類作成や海外とのやり取りはすべて専門家が代行します。ご遺族は、故人を偲ぶ時間に専念することができます。
大切なご家族が遺した資産を、確実かつ円滑に次の世代へ承継すること。それが、私たち専門家の使命です。
国際相続に関するよくある質問(FAQ)
Q. 遺言書が見つかったらどうすれば?
A. 遺言書がある場合、その有効性を現地の裁判所で確認する「プロベート」手続きが必須となります。遺言書の種類や形式が現地の法律に適合しているかどうかの確認も必要になるため、速やかに専門家にご相談ください。
Q. 現地の弁護士費用はどのくらいかかりますか?
A. 国や事案の複雑さ、資産額によって大きく異なります。一般的には、相続財産額の数パーセントが報酬となるケースや、時間単位で請求されるケースがあります。事前に複数の弁護士から見積もりを取ることをおすすめします。
Q. 相続を放棄したい場合はどうすれば?
A. 日本の家庭裁判所での相続放棄手続きとは別に、資産がある国の法律に従った放棄手続きが必要になる場合があります。特に故人に多額の借金がある可能性がある場合は、資産と負債の全体像を把握するまで、安易に相続手続きを進めないことが重要です。
Q. 手続きにはどのくらいの時間がかかりますか?
A. 単純な事案でも半年から1年、不動産が絡んだり、相続人間で争いがあったりする複雑な事案では数年単位の時間がかかることも珍しくありません。
まとめ
今回は、海外でご家族が亡くなった際の国際相続手続きについて、5つのフェーズに分けて解説しました。国際相続は、準拠法、プロベート、言語の壁など、国内相続にはない特有の難しさがあります。
特に、現地で取得する「死亡証明書(複数部)」と「アポスティーユ」は、その後のすべての手続きの鍵を握る最重要書類です。
「備えあれば憂いなし」という言葉通り、ご家族が海外に在住されている場合、元気なうちから資産の状況や相続について話し合っておくことが、将来の無用なトラブルを避ける最善の策となります。
もし、あなたが国際相続のことで少しでも不安を感じているなら、あるいは、すでにその現実に直面して何から手をつけて良いか分からない状況にあるなら、一人で抱え込まずに、私たちOSSJにご相談ください。豊富な経験と専門知識で、あなたとご家族の大切な資産承継を力強くサポートします。
参考文献
https://silk-stream.com/contents/contents-inheritance/contents-inheritance01/
ディスクレーマー(免責事項)
本記事は、国際相続に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別具体的な事案に対する法的・税務的アドバイスを提供するものではありません。実際の相続手続きにあたっては、必ず弁護士や税理士などの専門家にご相談ください。



