海外赴任中に日本にある不動産を売却する方法と注意点を解説
海外赴任が長くなってくると、日本で保有している自宅やマンションを売却することも頭をよぎるかもしれません。あるいは日本国内の不動産を相続した場合も同様です。
海外に住んでいても、日本にある不動産を売却できます。しかし悩ましいのは売却に関する手続きでしょう。
もしあなたが「日本の法人の海外支店などに1年以上の予定で勤務する給与所得者」なら、所得税法上、日本国内に住所を持たない者とみなされます。
日本に住所を持たないため、手続きに必要な住民票もありません。したがって日本で不動産を売却する場合とは、必要な手続きや書類が異なります。
本記事では、海外在住の方が日本にある不動産を売却する方法・手順と注意点を解説します。なお手続きの詳細や費用・税金については必ず司法書士や税理士など、専門家の指示を仰ぎましょう。
目次
海外在住者が日本にある不動産を売却する6つの手順
まずは不動産を売却するおおまかな手順を把握しておきましょう。専門家への依頼から売却後の手続きまで、6つのステップで解説します。
- 不動産仲介業者と司法書士を探す
- 必要な書類を準備する
- 不動産の買い手を募る
- 買主と売買契約を結ぶ
- 決済と物件の引き渡しをおこなう
- 確定申告する(不要な場合もある)
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1. 不動産仲介業者と司法書士を探す
海外在住者の不動産売却は、不動産仲介業者にくわえて司法書士にも協力してもらいます。海外に住んでいるため日本への帰国が難しいこと、また手続きも複雑なことから、誰かに代理で進めてもらう必要があるためです。
不動産仲介業者
不動産仲介業者は不動産の売り手と買い手のあいだに立ち、手続きや契約をサポートしてくれます。具体的には物件の査定や仲介、契約書の作成、不動産の引き渡しなどです。
ただし海外在住者には対応していない業者もあるため、一括見積もりなどを利用して探しましょう。また連絡手段や、現地での立ち合いが難しい際の対処などをよく確認しましょう
司法書士
司法書士は法律に関する手続きや書類の作成を代行してくれる専門家です。たとえば不動産取引の決済においては、基本的に売り手と買い手の立ち合いが必要です。帰国が難しい方は司法書士に代理人となってもらえば、立ち合いと手続きをあなたの代わりに進めてもらえます。
2. 必要な書類を準備する
日本で不動産を売却する場合、おもに次のような書類が必要です。
- 身分証明書
- 実印
- 印鑑証明書
- 住民票
- 間取り図
- 登記済権利書または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書と固定資産税評価証明書
- 土地測量図・境界確認書
- 建築確認済証と検査済証
海外在住者の場合は印鑑証明や住民票がありませんから、代わりとなる書類を準備します。(後述)
3. 不動産の買い手を募る
不動産仲介業者が物件情報をWebサイトに載せる、広告を出す、内覧を手配する、などを担ってくれます。ただし価格交渉などで連絡が入るかもしれませんので、電話やメールなどを気にかけておきましょう。
4. 買主と売買契約を結ぶ
交渉がまとまり、買い手が決まったら契約に進みます。通常、契約の際には売主と買主の立ち合いが必要ですが、難しい場合は司法書士に依頼しましょう。
契約を結んだ時点で、不動産仲介業者に仲介手数料の50%を支払います。また買主が手付金を支払うのもこのタイミングです。
5. 決済と物件の引き渡しをおこなう
契約を結んだら、いよいよ決済と物件の引き渡しです。買主は売主に残りの購入代金を支払い、売主は不動産の所有権移転登記や住宅ローンの返済、抵当権抹消の手続きをおこないます。また残りの仲介手数料もこのタイミングで支払います。
6. 確定申告する(不要な場合も)
確定申告が必要な場合は、不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日までに確定申告をしましょう。
次の1, 2の場合には確定申告が必要で、3の場合は申告によって税金が還付される場合があります。
- 不動産を売却して利益が出た場合
→「不動産売却額-(取得費用+譲渡費用)」がプラスになった場合 - 賃料収入がある場合
- 源泉徴収をおこなった場合(後述)
確定申告する際には、日本で申告手続きや納税をおこなってくれる「納税管理人」を立てます。納税管理人は日本に住むご家族などでも問題ありませんが、税理士にお願いするのが安心です。海外在住で申告書の作成が難しい場合、代理で申告書類を作成できるのは税理士だけだからです。
海外在住者が日本にある不動産を売却する際に必要な書類3種
不動産売却にあたって必要な書類は先述しましたが、ここでは海外在住者による売却だからこそ必要な書類が3種類あります。
- 在留証明書
- 署名証明書(サイン証明書)
- 代理権委任状
ひとつずつ簡単に説明します。
1. 在留証明書
在留証明書は外国に住んでいる日本人の住所(生活の本拠)を証明する書類です。大使館や総領事館、政府代表部にて発行してもらえます。
本人による申請が原則であり、発行には日本国籍であること・本人確認ができる書類(パスポートなど)、住所や滞在開始時期を確認できる文書(公共料金の請求書など)が必要です。
2. 署名証明書(サイン証明書)
署名証明書は日本の印鑑証明に代わるものです。申請者の署名(および拇印)がたしかに領事の面前でなされたことを証明します。つまり領事の前で署名(または拇印)をしなければならないため、本人による申請が必要です。
日本国籍であること・本人確認ができる書類(パスポートなど)を持って、大使館・総領事館・政府代表部のいずれかで発行してもらいましょう。
3. 代理権委任状
代理権委任状は、不動産の売却にかかるさまざまな手続きを誰かに代理でおこなってもらう際に必要です。先述のとおり代理人は司法書士にお願いすると安心・スムーズでしょう。代理権委任状も司法書士が作成してくれます。
海外在住者が日本にある不動産を売却するときの注意点
不動産の売却には各種費用と税金が発生します。お金に関する情報をきちんと開示してくれる不動産仲介業者・司法書士を選びましょう。
ここでは不動産を売却する際に発生するおもな費用・税金、源泉徴収されるケースについて説明します。
必要な費用
不動産の売却でかかる費用はおもに次の4種類です。
- 不動産仲介業者に支払う仲介手数料
- 司法書士に支払う報酬
- 住宅ローン返済費用(返済中の場合)
- 抵当権を抹消するための登記費用
なお不動産仲介業者への仲介手数料(上限)は法律によって次のように定められています。
不動産の売却額 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却額×5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 売却額×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売却額×3%+6万円+消費税 |
不動産の売却額は400万円を超える場合がほとんどです。
消費税率が10%であれば「売却額×3%+6万6,000円」で簡単に求められます。
税金
不動産の売却で発生する税金は次の2つです。
- 譲渡所得税(利益が出た場合)
- 印紙税
印紙税は不動産取引などの経済取引において作成される書類にかかる税金です。不動産取引においては売買契約書に印紙を貼り、消印をすれば納税したこととなります。なお税額は売却価格によって異なります。
源泉徴収される場合
売却金額や買主の法人/個人の別によって10.21%の税率で売却金額から源泉徴収されることを念頭に入れておきましょう。
- 買主が法人→源泉徴収される
- 買主が個人
- 売却金額が1億円超→源泉徴収される
- 売却金額が1億円以下
- 不動産の購入目的が買主自身または買主の親族の居住用→源泉徴収されない
- 不動産の購入目的が上記以外→源泉徴収される
源泉徴収自体は買主がおこないますが、売主は確定申告によって源泉徴収額の還付を受けられる場合があります。
まとめ
海外在住者による日本国内の不動産の売却は、日本に住んでいる人がおこなうのにくらべて手続きの面でどうしてもハードルが上がります。
実績が豊富な不動産仲介業者、親切に対応してくれる司法書士、必要であれば税理士にも依頼して売却をスムーズに進めましょう。
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