シンガポールの所得税の特徴は?納税方法や日本との違い、控除制度を解説
シンガポールに駐在している、または移住する予定だけど、所得税の仕組みがよくわからないとお困りではありませんか。シンガポールの所得税の仕組みは日本と異なります。支払い時期に焦らず済むよう、所得税の納税額や納める方法を把握しておくことが大切です。
この記事では、シンガポールの所得税の仕組みを詳しく解説します。納税方法や利用できる控除、日本との違いも紹介するので、シンガポールで所得税を納める予定の方は参考にしてください。
※本記事は一般論を解説しております。税制は所得別、居住ステータス別などでも毎年変わりますので、具体的な相談は専門家へご相談ください。
日本の所得税を理解していても、シンガポールの所得税の仕組みを把握している方は少ないでしょう。ここでは、日本とは異なるシンガポールの所得税について解説します。
課税所得別の税率
所得税額を算出する際、総課税所得・控除・税率を用いるので、所得額別の税率を把握することが大切です。シンガポールの税率は以下の通りです。
所得額 | 税率 |
---|---|
~20,000Sドル | 0% |
20,001~30,000Sドル | 2% |
30,001~40,000Sドル | 3.5% |
40,001~80,000Sドル | 7% |
80,001~120,000Sドル | 11.5% |
120,001~160,000Sドル | 15% |
160,001~200,000Sドル | 18% |
200,001~240,000Sドル | 19% |
240,001~280,000Sドル | 19.5% |
280,001~320,000Sドル | 20% |
320,001~500,000Sドル | 22% |
500,001~1,000,000Sドル | 23% |
1,000,001Sドル~ | 24% |
所得税の計算方法は(総課税所得-所得控除)×税率です。たとえば、総課税所得額が140,000Sドルだとすると(140,000Sドル-1,000Sドル)×15%=20,850Sドルとなります。総課税所得が20,000Sドル以下の人は非課税になるため、所得税を納める必要はありません。
所得税の納税方法
シンガポールで所得税を納めるには、確定申告を行う必要があります。日本には源泉徴収制度があるため、会社に勤める人は毎月の給与から所得税が天引きされています。しかし、源泉徴収が行われないシンガポールでは、会社勤め・自営業に関係なく確定申告をしなければならないのです。
確定申告の流れは以下の通りです。
- 勤務先から所得証明をもらう
- 申告に必要な情報を確認する
- IRASにアクセスして手続きを済ませる
シンガポールの確定申告は原則オンラインで行うため、期限までに所得証明を受け取り、手続きを進めましょう。一点注意したいのが、日本に勤め先の本社がある駐在員のケースです。
駐在員は所得の内容が複雑なため、本人が正確な内容を申告することが難しいケースがほとんどです。多くの駐在員は会計事務所に任せているため、駐在している方は手続きを依頼することがおすすめです。
申告後、1~2カ月以内に賦課通知が手元に届きます。賦課通知を使って納税することになるので、なくさないように気を付けましょう。所得税の支払いは、自動引き落としを利用することも可能です。
日本とは何が違う?
日本とシンガポールの税制には大きな違いが2つあります。移住後に間違えないよう、事前に理解を深めておきましょう。
最高税率に大きな差がある
日本とシンガポールの所得税の違いとして、最高税率が挙げられます。前述のように、シンガポールは所得額別に2~24%の税率が課されます。日本は所得額別に5~45%の税率が課されるため、納税負担は日本のほうが重いといえるでしょう。
源泉徴収がないので確定申告が必須
源泉徴収制度の有無も、日本との大きな違いです。会社に勤めている方は毎月の給与から所得税が天引きされ、年末調整で調整します。自営業の人は確定申告を行う必要があるものの、会社勤めの方は確定申告の経験がない方が多いでしょう。
シンガポールに駐在、または移住して収入を得る場合、毎年確定申告を行わなければなりません。初めて申告を行う方は、手順に戸惑う可能性があるため、申告の流れを早めに確認しておくことが大切です。
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納税負担を抑えるシンガポールの控除制度
日本と同じように、シンガポールにも所得税に適用できる控除制度があります。ここで利用できる控除制度を紹介するので、該当する控除を覚えておきましょう。
勤労者控除
シンガポールで働いて収入を得ている人は、勤労者控除を適用できます。年齢別に控除額が異なるため、事前にチェックしておきましょう。
- 55歳未満:1,000Sドル
- 55~60歳未満:6,000Sドル
- 60歳以上:8,000Sドル
傷害のある人や精神疾患のある人は、勤労者所得控除に以下の額を上乗せできます。
- 55歳未満:4,000Sドル
- 55~60歳未満:10,000Sドル
- 60歳以上:12,000Sドル
勤労者所得控除は幅広い人に適用されるため、申告の際に適用し忘れないよう注意しましょう。
配偶者控除
年間所得額が8,000Sドル以下の夫、または妻がいる方は、配偶者控除を適用できます。配偶者控除は2,000Sドル、傷害がある場合は5,000Sドルです。年間所得額に制限があるため、配偶者の所得を確認したうえで適用しましょう。
子ども扶養控除
16歳未満、または16歳を超えていて大学などの教育機関に在籍している子どもがいる場合は子ども扶養控除を適用できます。控除額は1人につき4,000Sドル、傷害がある場合は7,500Sドルです。アルバイトをしている子どもは年間所得額が4,000Sドル以下であることも条件になります。
両親扶養控除
両親を扶養しており、一定条件を満たす場合は両親扶養控除を適用できます。控除を適用する条件は以下の通りです。
- 両親と同居している
- 別居している両親の毎月の収入額が4,000Sドル以下
- 両親の年齢が55歳以上
- 両親が外国籍の場合はシンガポール在住期間が8カ月以上
まずは両親の年齢を確認しましょう。55歳以上で別に済んでいる場合は、両親の毎月の所得額を聞いておくと良いでしょう。また、両親が外国籍の場合は、シンガポールの在住期間もチェックしておかなければなりません。8カ月以下だと控除を適用できないので注意しましょう。
生命保険控除
生命保険に加入しており、一定条件を満たす場合は生命保険控除を適用できます。適用できる条件は以下の通りです。
- 配偶者の分の掛け金も控除対象にできる
- シンガポールに生命保険会社の支店がある
どちらも満たす場合は、保険の掛け金・保険金の7%のどちらか低い方の額を控除できます。
シンガポール在住時は確定申告を忘れず行うことが大切
シンガポールには源泉徴収制度がないので、毎年確定申告をして所得税を納めなければなりません。勤め先から所得証明をもらえるので、書類を受け取ったら早めに申告手続きを開始しましょう。
日本に勤め先の本社がある場合は、所得内容の複雑さや慣れない控除などの問題から、会計事務所に依頼することが推奨されています。自身で申告できる場合は期限までにオンライン申告、不安な場合は専門家にお任せすることが大切です。
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