香港MPFの途中解約で必要な書類と手順は?メリット・デメリットも解説
香港には、MPF(強制積立年金)という年金制度があります。これは、原則として65歳を迎えると、それまで運用していた積立金を一時金として受給することが可能となるものです。日本では確定拠出年金の部類に入るものです。
MPFは香港で働く人が加入しなければならない、強制加入の年金制度です。日本人の方の中には、香港での仕事を終えて、日本へ帰国、もしくは他国へ異動、移住するケースもあるでしょう。
本記事では、このようなMPFを途中で解約する際の手順や注意点を整理していきます。
MPF(強制積立年金)とは老後の生活を安定させるために、毎月3万香港ドルを上限として給与のうち10%を会社と従業員で折半負担、つまり会社5%、従業員5%を積み立てて運用する年金制度です。香港では、パートタイマーを含む18歳以上65歳未満の従業員に対してMPFへの加入が義務付けられています。
ただし、以下に当てはまる場合はMPFへの加入が免除されます。
- 香港への滞在期間が13ヶ月以内の人
- 自国の年金制度に加入中の海外から来た労働者
これから香港の海外駐在員となる場合は、MPFの加入について勤め先にも確認しておくと安心ですが、一般的な駐在員は厚生年金に日本の本社で加入しているため、通常はMPF加入を免除されます。
ただ、注意したいのは香港へ移住した人、香港の現地で仕事をしている人、これらの対象になる方は、勤務先が加入する義務があります。ただし、毎月の給与が7,100香港ドル未満の場合、従業員側の積立が免除されます。
この強制加入年金制度については、理解が間違っている経営者も多いため、正しい判断ができる取り扱い先に確認しましょう。弊社でも日系の提携先をご紹介させて頂いております。
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香港のMPFを途中解約した場合の扱い
MPFで積み立てて運用した資産は、原則として65歳から受給可能です。しかし、仕事で香港へ赴任した人などは、65歳を迎える前に帰国して香港を離れる可能性も考えられます。こうした場合は、65歳を迎える前にMPFを途中解約して資産を受給することができます。
注意点として、永久に香港を離れることを理由としてMPFを途中解約できるのは生涯で1度のみです。途中解約したものの仕事の都合で香港へ戻って働いた場合は、MPFに加入する事になり、その資産は基本として65歳を迎えるまでは受給・解約はできません。
一度香港を離れて帰国しても、また戻って来る可能性もある場合は、途中解約せずに運用のみを行うことも視野に入れるとよいでしょう。
香港のMPFを途中解約する際の必要書類と手順
香港のMPFを途中解約するには、事前に必要書類を揃えておく必要があります。
具体的に必要な書類と実際の手続きについて整理しておきましょう。
必要書類
MPFの解約にあたって、まずは以下の書類を揃えましょう。
- 申請書:FORM MPF(S)-W(O)
- Statutory Declaretion for Claims for Payment of Accured Benefits:FORM MPF(S)-W(SD2)
- 香港IDのコピー
- パスポートのコピー
- 香港税務局からのLETTER OF RELEASE
- 振込先の銀行口座情報(日本の銀行も可能です)
- 香港以外の移住・居住予定証明書
FORM MPF(S)-W(O)とは、香港からの永久出国などを理由に、MPFの払出しを請求するためのフォームです。また、FORM MPF(S)-W(SD2)香港からの永久出国を理由とする MPF の払出し請求に関する法定宣言書です。
これらの書類はMPFの運用会社からもらうことができますし、MPFの公式ホームページからダウンロードすることもできます。また、LETTER OF RELEASEは次で解説する個人所得の清算によって発行されます。
解約手順
MPFの解約手順は以下の通りです。
- 個人所得税の清算とLETTER OF RELEASEの発行
- 民政事務局で宣誓する【永久出国する旨の文章を読み上げます】
- FORM MPF(S)-W(SD2)への署名、各種必要書類を送る
- 数週間~数ヶ月後に振込み
香港からの出国が決定したら、離港通知書(IR56G)を税務署へ提出して個人所得の申告と納税を行います。この通知書は勤め先に依頼することで入手可能です。個人所得の清算が完了したら、必要書類の1つであるLETTER OF RELEASEが発行されます。
その後、必要書類を揃えて民政事務局へ向かいます。予約は必要ないので、受付時間内に行きましょう。
民政事務局では、公証人の前で「宣誓」を行います。これは、英文もしくは中文で書かれており、「自分は永久に香港を離れることに虚偽はない。提出文書の内容はすべて理解している」という内容です。英語もしくは中国語で読み上げることになりますが、ネイティブのようにスラスラと読める必要はありません。
宣誓が終わると申請者と公証人がFORM MPF(S)-W(SD2)に署名し、民政事務局の捺印をもらいます。最終的にこれと他の必要書類をMPFの運用会社へ送って手続きは終わりです。
MPFの資産が振り込まれるまで数週間~数ヶ月を要します。入金予定日はあらかじめ運用会社へ確認しておくと安心です。
香港のMPFを途中解約するメリットとデメリット
仕事でまたいつか香港に住む可能性のある人にとっては、帰国時にMPFを途中解約するかどうか悩ましいところです。ここで、MPFを途中解約するメリットとデメリットを整理しておきましょう。
メリット
MPFを途中解約するメリットとして、例えば以下が考えられます。
- 資産の早期受給が可能
- 他の資産運用に回せる
もう香港へ住むことがなければ、解約することで積み立てた資産を早く現金化できます。そのお金は帰国してからの生活費に充てたり、新たな資産運用の元手として活用したりすることが考えられます。
デメリット
MPFを途中解約するデメリットとして、例えば以下が考えられます。
- 再加入したときに永久に香港を離れる事を理由に途中解約できなくなる。
- 運用パフォーマンスが伸びない可能性
- 自力での手続きが必要
一度MPFを途中解約して帰国したものの、再度香港へ住むことになった場合、今度は同じ理由では途中解約ができません。
また、一般的に有利な運用が可能と言われているMPFでの運用機会を失うことになります。そのため、自分の年齢や運用期間を考慮して途中解約すべきか決めましょう。
MPFの途中解約は自分で書類を揃えたり所定の場所へ行く必要もあるので、面倒だと感じてしまう人もいるかもしれません。
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香港のMPFの途中解約は今後のことも考慮して手続きしよう
香港に居住中、もしくは居住経験のある人、相談されている人が、本記事を読まれているかと思いますが、MPFの途中解約に必要な書類や手続きについては、運用会社などにも確認しておくとスムーズでしょう。
また既に香港を離れている場合でも、香港外からMPFを解約することも可能です。香港で再度働く可能性があり、MPFを残した方、また運用を継続したいと考えてMPFを残した方などが、香港に行かずにMPFを解約したい場合などありましたら、OSSJへご連絡ください。迅速な解決に向けてサポートいたします。
途中解約するかどうかは、その資産がすぐ自分に必要かどうか、今後また香港で働くする可能性があるかどうかなどで判断しましょう。MPFで運用しているお金がすぐに必要でなければ、途中解約せずに帰国後も運用だけしておくという方法もあります。
一度途中解約すると再加入時は65歳まで待つ必要があるので、時間をかけて検討することをおすすめします。